三幸製菓工場火災における危機管理とコンプライアンス遵守の考え方

 新潟県に本社・工場がある三幸製菓の工場で、火災が発生し従業員の方がお亡くなりになるという痛ましい事故が発生しました。火災事故を起こした三幸製菓は、煎餅やあられなど、私たちがよくスーパーで目にする商品を製造・販売しており、これら製品になじみがある方も多いのではないでしょうか。

 本日公表された三幸製菓の文書によると、火災原因は不明とのことで、未だ原因究明作業が続いているとのことです。

 今回公表された文書には、この火災事故発生前に、工場の焼・味付工程の味付乾燥機設備内のせんべい屑焼損のインシデントが複数回発生していたと記載されていました。

 会社による火災原因に関する公式文書公表前に、週刊誌報道等で、普段から工場内の清掃が行き届いておらず、煎餅などを製造した際の屑が工場内に堆積していたとの従業員の方の証言もありました。

 今回公表の公式文書で、工場内が従業員の方の証言どおり、よく清掃されておらず、それが原因で、過去火災が発生していたことを会社も認めることとなりました。

 公表された公式文書では、火災事故発生の都度、消防当局の指導のもと、工程の安全性の向上に努めてきたとあります。今回の火災原因は、現時点では不明とされており、これまでの火災原因と同様に煎餅などを製造した際の屑ではないかもしれませんが、何度も同じ原因で火災事故を発生させてきたことに鑑みると、工場の安全確保のあり方について、抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか。

 三幸製菓では、火災という目に見える重大事故の発生にまで至ってしまっていますが、このような重大事故発生に至るまでには、29もの軽度な事故や失敗が発生していて、事故や事件に至らなかったものの300のヒヤリリハット体験が存在するといわれています。

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 これは、労働災害の研究事例から導き出されたハインリッヒの法則と呼ばれるもので、労働災害や事故などの発生頻度から推計したリスクが、顕在化する確率を経験則にしたものです。

 この法則に則ると、火災という重大事故が発生するまでに、相当数のヒヤリハット事案があったのではないかと推察します。

 多くの会社では、重大事故が発生しないよう、ヒヤリハット事例を従業員に報告させるなど、事案を共有し、ヒヤリハットを起こさないよう、努めていることかと思います。

 危機管理の基本は、危機の発生を未然に防ぐことです。手間がかかるといってヒヤリハットの事例を放置することなく、なぜヒヤリハットの事例が発生したのかを分析し、その分析に基づき、一つひとつ丁寧にその発生原因を潰していくことが重要です。

 そのヒヤリハットは、機械の誤作動が原因なのか、従業員のうっかりミスや、不慣れが原因なのか、など原因を究明し、その原因にマッチした対策を講じることが必須です。

 ここで一番問題となるのが、「効率」を最優先としている場合です。機械が誤作動したという原因は判明しているのに、効率を優先しメンテナンスを後回しにしているや、従業員が不慣れなのに、「効率」を優先し、従業員教育を後回しにしているといった場合です。

 会社として利益を上げ続けるために、効率が優先される場合が多々あるかと思います。営利企業である以上、仕方がない面はあるのですが、効率を優先させた結果、工場から火災が発生するかもしれない、従業員が大けがをする重大な労災事故が発生するかもしれないといった想像力を働かせることが必要です。

 会社が社会から要請されていることの重要な事項の一つは、事故をおこさず、従業員にケガを負わすことなく、安全に操業することです。

 コンプラアインスを広い意味での社会からの要請と捉えれば、効率とコンプライアンス遵守を天秤にかけるのではなく、いかにコンプライアンスを遵守しながら効率を上げるかの視点が求められることになります。

 自社から重大な事故を発生させると、取り返しのつかないことになります。コンプライアンス遵守の側面からも、会社の危機管理のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。

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